インターセプタ~音透湖の日常~

実はこの小説、中途半端な状態で未完結でした。しかし2021年に文章構成を修正し、終わりまで書くことができました。それでもまだ当時の拙い文章の面影が残っており、音透湖について人物設定を掘り下げるべきという反省点があります。以下本編です。

登場人物の紹介

音透湖

本作の語り手であり主人公。偽名として星名サナエを名乗るときもある。
またの名をインターセプタ<年表干渉者>。
EMP能力は多岐にわたるが、主に使用されるのは下記能力である。

  • 時間移動能力
  • イメージスクランブル能力
  • 記憶操作能力
  • EMP情報操作能力

アスタリスク<自動干渉機>

各世界に介入し時空を修正する力をもつ時空機械。主にインスペクタ<高等監察院>とインターセプタ<年表干渉者>が申請して利用する。

本編

 個体名“音透湖”はインターセプタと呼ばれており、年表干渉者の役割を果たしている。彼女はこの世界、いや、平行世界に存在する世界を監視し、閲覧し、修正する事ができる。修正にはアスタリスク<自動干渉機>と呼ばれる特別な機関に申請して介入してもらう必要があるが、めったに修正しないらしい。よほどの事がない限り。

*

 <アスタリスク>
 介入する。
 ……汎用AIモジュールをインクルード。
 ……終了。
 処理をPGM_INTERCEPTORに挿入。
 実行。
 
 終了。

*

 …
 ……
 ………
 …………

 私、音透湖は様々な世界を行き来していました。その時のエピソードを語っていきたいと思います。
 まずは、私がいつ今のEMP能力に目覚めて、いまの役割がどういうものなのかを話したいと思います。私はインスペクタ<高等監察院>と同じぐらいの立場なのですが、役割はまったくと言ってほど違います。私は時間を自在に行き来することが出来るので、時々過去の自分に遭遇しています。この力を自覚しかけだった過去の私は誘拐されて、とある事件を引き起こしてしまいました。
もっと具体的なお話をすると、その時助けてくれそうな人間をある特定の時間に移動させてしまいました。私はこの時間的ループの解除と過去の自分自身を助けるために、星名サナエとして、神田健一郎A、Bに事件を解決させる役割を担ったのです。
3日後の未来から来た方がafterなのでAと、3日前の過去から来た方をBと呼称しています。
 この事件では神田健一郎の時間的ループを解除することが出来ましたが、ナイフのループだけは解除することが出来ませんでした。最初のナイフは一体どこから来たのでしょうか?
 私はこの事件が収束したとき、ある約束を神田健一郎さんとしました。ある約束とは、どこかの時間線上で再会し話をすることです。約束した日時は今でもはっきりと覚えています。
人間誰しもが感じる感情、寂しさと胸の奥が軋むような感覚を覚え、これが叶える事ができない恋だと認識することが出来ました。

 2つ目のエピソードですが私は新たな事件を担当することになり、これもまたループ解除をしなくてはいけないようです。何度介入しても、同じ時空間から出現してしまう。どうやら無限ループしているようです。
何度も出現してしまう人物とは宮野秀策というEMP能力者でした。彼は厄介事を集めやすいと思っています。
介入履歴を削除し、再度介入する必要があったのでアスタリスクに申請。結果彼はループから脱出することが出来たのです。
 ここで宮野秀策のEMP能力がとても興味深いので紹介します。彼の能力は黒魔術と真相の一端を掠めとる能力。二つ目の能力は時として、世界の階層を飛び越えて上位世界に逆介入する能力でもあるため、インスペクタに危険視されていました。
インスペクタと交渉し、宮野秀策を生かす案を通しました。彼の存在は誰にも消させはしない。私自身の信念でもありました。
 彼は幼い頃の私を救ってくれた数少ない恩人の一人なのですが、私はあまり覚えていませんでした。インターセプタとして彼と遭遇した際に思い出すことが出来ました。
アスタリスクを一時的に敵性勢力に負荷をかけられて機能停止する前に、彼とその仲間たちに負荷を解除してもらったのはまた、別のお話しです。

 3つ目のエピソードをお話する前に私がどんな世界にいったのか紹介します。
私が誕生した世界を#0と表現すると、PSYネットワークが存在しない#26やPSYネットワークが完全な状態にある#256といった世界があります。
平行世界は横にもあるように縦方向にも存在するのです。それが上位世界。
例えばこの世界を基準とすれば、この世界で書かれた小説はいわゆる一つの世界です。その小説はこの世界よりも下にあり、下位世界と呼ばれている。
勘違いしないでほしいのですが、これはあくまでも相対価値にすぎません。下だからといって世界のレベルが低いのではなく、単純に位置的に下なだけなのです。
私は数多くの上位世界を文字通り見てきました。
物理法則が根本から異なる世界。超能力が科学で解明されている世界。化学ではなく錬金術が発達している世界。機械文明が発達している世界。情報技術が異常に発達している世界。魔術が発達した世界。時間移動理論が確立された世界。亜空間や次元の狭間に存在する次元エネルギーを利用する高次元存在など多数。
私は数々の世界に圧倒されました。特に情報操作なる技を用いて、魔法のような技術を使う地球外生命体には驚きを隠せませんでした。彼らは周囲5メートル内にいる人間の記憶を読み自在に操る力がありました。私はインスペクタに彼らだけは油断するな、と釘を刺された事があります。

​ ここでやっと3つ目のエピソードを話していこうと思います。高度な情報操作能力をもつ地球外生命体とともに世界の崩壊を食い止めた話です。
 ことの発端は特異能力者が異世界の情報生命体に寄生された事象があり、その情報生命体が特異能力者の能力を使用して物理的にも情報的にも世界を書き換えようとしていました。細かい事象は省きますが、寄生した情報生命体を消滅させる事で解決しました。私1人が解決したのではなく、その世界の住人ともに解決しました。私はなるべく自身では介入せず、彼らのお手伝いをしているのです。

4つ目のエピソードとしては、重力波が発見された世界での出来事です。その世界では、重力波が発見され、それを応用し反重力を人工的に作り出すことに成功したのです。そこから科学技術が一気に加速し、高次元エネルギーを次元の隙間から引き出そうと世界中の研究機関が、躍起になっているところでとある事件が発生しました。それはJ研究機関で書かれた1つの論文が始まりでした。
その論文の内容を要約すると、高次元エネルギーを用いた時間移動に関する論文でした。この論文は未完成だとして、まだ未発表のものでしたが、別の研究機関がその論文データを盗みあたかも自分たちが書いたかのように発表したのです。 そこから、J研究機関と某海外研究機関が対立してしまいました。裏では壮絶なサイバー戦争が行われていたようです。
この状況を打破するために、私はJ研究機関に派遣されました。私は得意の記憶操作で、いままでいたかのように潜入しました。この仕事はとあることがあって一番きつかったと思います。そのとあることとは、研究員の一人が私に一目ぼれしたらしく、私に告白してきたのです。困りました。私には既に心に決めた方がいたからです。もちろん、私は理由を言って断りましたが、彼はしつこい方で偶然を装って私の前に何度も現れてお茶に誘われたりしました。最終的にはお得意の記憶操作で記憶を私と出会う前に改変して事なきを得ました。念の為、さらに私は時間移動を駆使して彼が現れるタイミングを把握し、特定の日時に自身の姿をIS能力で偽装するという能力を行使しました。この念の為の工作で能力を常時展開していましたのでいつもよりも疲労が溜まりやすくなってしまいましたが、その後は厄介がなくなりましたので無事に某海外研究機関を事実上解散できました。
事実上解散といってもまだ後始末が残っている状態でしたが、その後始末は住人に任せました。

​今回は4つのエピソードを語りましたがどうでしたか?
それではどこかの時間線上でお会いしましょう。